古流柔術の先生を尋ねてきました

長く太極拳を愉しみ伝えてもきましたが実は悩みがあります。それは武術面での経験不足。ここ15年程は手を合わせる相手不在のまま一人練功をしてきました。

数年前にその悩みから進む道を見つけるため、地域の先輩が学んでいる空手の先生、同門の先輩、ほんの一本の糸しか繋がりのない方にまで連絡をとらせていただいたり…ちょっと迷走していました。そのなかで交流させてもらった前島先生の気功のなかに太極拳の中身・理論とピタリと合う練功法がたくさんあり、また全てを説明できることに感銘を受け学びはじめ当時の不安を払拭することができました。またその学友から武術を愛する友人もできたり少しづつ求めるものが近くになり幸せな環境に身を置ける時間がやってきました。

現在でも気功の学びはまだ途中でありますが、武術面への憧れのような不安…とは変な表現ですが…を補完して更に学んでいくには先輩に繋いでいただいた伊与久さん(本当は”先生”と書くべき立場の方ですが、あえて図々しくも友人的に”さん”と書かせてもらっちゃいます)との縁を頼る必要があるのだろうな〜と思っていたところ、このところ伊与久さんが学んでいらっしゃる諏訪古流の柔術である宮川流の宮川順心斎老師の元を尋ねさせて貰うことができました。

ちなみに伊与久さんについてはこの記事をご覧ください。
>> 秘伝9月号

順心斎老師は表立って教えをしていらっしゃらないので伊与久さんが頼りの綱。一緒に伺うわけですが前々から、恐ろしいほどの、鬼のような…強さ。痛い、対応できない、投げられっぱなし…、という噂を数名の方から聞いていて内心ビビリながらの訪問です。

天気はよく道すがらカッコイイ八ヶ岳が目の前にバーンと広がっても心はそちらに向ききらないワタクシなのでした。いやはや情けなし。

170905_001.jpg

伊与久さんとN須野さんとの3人で伺い、先ずは順心斎老師と伊与久さんの武術談義を聞かせていただきました。その後私のことを訪ねてくださったので改めて自己紹介させていただき、葉式太極拳の事を少しだけ言葉で伝え動きを見ていただきました。

ちなみに順心斎老師はとても柔らかで穏やかな方で噂が信じられない…そんな調子ではありましたが、腹の深いところから出ているであろう響く声から実力の高さを感じさせてくれます。ちなみに御歳82。そのお年とは思えないはつらつさと肌の艶であります。

そんなわけで少々手ほどきをいただいた後、突いて来なさいとおっしゃるので突いたところあっという間に全てを取られ縦に、つまり真下に崩されてしまい…真下に崩されるなんて…と激しく驚きました。

驚きましたなんて書いてますが、本当の自分の言葉で表すと「理由(ワケ)が解らないよ」という状態で目をパチパチさせるので精一杯。その後余裕が出てきてから「えぇー!?」と声をあげたうえで笑うしかない、そんな状態でした。

その後も手ほどきをいただきながら投げられる投げられる。反撃しようと八卦掌的な動きを用いて変化対応するのですが全て合わせられ更に投げられ抑え込まれ…何もできません。
木刀を用いた対練、また一回だけ老師に模擬刀を持っていただいての対練をさせて戴いたのですが…50回以上死んだに違いありません。

その度怪我しないよう老師に守っていただき、感謝しながら投げられながらその強さに触れられることが嬉しくて笑うしかない、つまり投げられて喜んでいる傍から見たら完全な変人が3人出来上がっていました(いや、伊与久さんとN須野さんに失礼ですな)。

そんな調子で数時間稽古をつけていただきました。伊与久さんとN須野さんにしてみれば私がいると一人あたりの稽古時間が減ってしまうでしょうし、基礎のお話しは何度も聞いているでしょうから先に進む時間にできなかったことを思うと心が痛いのですが、とてもとても貴重な時間を戴けたこと感謝しています。

稽古の後は武道酒の稽古の時間です(笑)
順心斎老師のお好きなお酒を伺っていたので取り寄せさせてもらい、伊与久さんが作ってくださった料理と一緒に愉しませてもらいました。

170905_006.jpg

写真はないのですが中国仕込みの伊与久さんの料理はとても美味しくこれまた尊敬。しかも素食なんです。なんてステキなんでしょう。

順心斎老師の柔らかで知的でちょっとオチャメな側面を感じながら皆で過ごす愉しい時間はあっという間。暗くなってしまう前においとまいたしました。その際も車が角を曲がるまで見送ってくださり、最後の最後まで老師の暖かい心に触れさせていただきました。

一旦伊与久さんのお家にお邪魔させてもらい酔い覚ましを兼ねて(?)芝のお庭で先程の動きを復習させてもらいました。あわせて吾妻流の技や、太極拳的・八卦掌的見地からの解説などもいただき目から鱗の時間をいただきました。ちなみにココでも投げられっぱなしです(笑)

170905_005.jpg

170905_004.jpg

だけど悲しいかな、不器用な自分はなかなか体現できないのでした。3時間近く対練したのに…情けなし。そして更に悲しいかな、伊与久さんの息子ちゃん(小学生)のほうが上手に躰を使って投げるのでした。

改めまして順心斎老師、伊与久さん、N須野さん、本当に本当にありがとうございます。